コレクション: 小池祐生さん(小池農園)
生産者 小池祐生
生産地 熊本県菊池市
主な生産物 お米、サツマイモ、きゅうりなど
農薬の使用 なし
肥料の使用 なし
米どころ菊池で信念を貫く
熊本県菊池市七城町。熊本でも有数の米どころとして全国的に有名なこの地で、自然栽培の稲作・畑作をされている小池さん。
お父様の代から38年間、自然栽培でのお米作りに取り組まれていらっしゃいます。
"肥後もっこす"から受け継ぐ自然栽培
熊本県菊池市七城町の名所「メロンドーム」の近くで、小池さんは自然栽培に取り組んでいらっしゃいます。
小池さんは、この地で代々続く農家の家系。小池家が自然栽培に取り組むきっかけになったのは38年前になります。
まだ小池さんのお父様がお米作りをしていたころ、知り合いの方から「肥料・農薬を使わないお米を作ってくれないか」という依頼がきっかけでした。
「私の父は一般栽培の指導をする側でもありましたが、お客様から要望があり、ある日から肥料・農薬を使わないお米作りに取組み始めました。」最初は2反(約20m×100m)から、小池家での自然栽培のお米作りが始まりました。
それからは自家用のお米も自然栽培米に切り替えながら徐々に面積を拡げていき、今では3町2反(約320m×100m)、全ての水田を自然栽培でされています。
地域の稲作の指導をしていたほどのお父様は、お米作りに対する情熱は並々ならぬものがあり、80歳まで生涯現役・第一線で稲作を続けてこられました。
小池さんも10年前に稲作を継ぐまでは、お父様のサポート役しかさせてもらえなかったそうです。
「その頃から自然栽培米でのお米作りを本格的にしたいとは思っていましたが、なかなかそうもいかなかったですね(笑)。
私ももっこす(熊本弁で頑固者)だったので、親父に負けてられんと自然栽培の勉強も沢山していました。」
小池さんはお父様には技術的な面では一切教えてもらうことなく、最初は独学で自然栽培を学ばれていかれました。
それでも「父の稲作に対するひたむきな姿を見るだけでも、学ぶべきことがたくさんあった」と語られる小池さん。
小池さんが自然栽培に取り組む中で、お父様の存在はとても大きいものでした。
天下第一の米 砂田米
熊本県菊池市七城町は、日本有数の米どころです。
その七城町の中でも、菊池川と迫間(はざま)川に挟まれた砂田地区の田んぼは『砂田米』と呼ばれます。
『砂田米』は江戸時代から“天下第一の米”と称され、将軍家や皇室への献上米とされてきた歴史があります。
砂田地区の特徴は、川の流れが作る砂の混ざった独特な土壌(=砂壌土)です。
砂壌土は、他の田んぼに比べると栄養分を土中に蓄えにくい地形と言われます。
そのため、一般的には稲の生育には悪い条件に見えますが、稲は自ら養分を取り込むために、根をより深く四方に必死に拡げていきます。
また、土の中に小石の層がある砂壌土には、 稲作に適した花こう岩のミネラル成分がたっぷりと含まれております。
こういった要素が絡み合い、七城町砂田米は、通常の稲よりも逞しく、そして生命力に溢れた美味しいお米ができると言われています。
「砂地なので収量はさほど多くは採れないのですが、美味しいお米がとれるこの地で稲作ができることに感謝しています。」
全国的に見ても環境保全型農業が盛んな菊池市。
その中でも生き方に自然栽培を落とし込み実践されている小池さんは、菊池環境保全型農業技術研究会の会長もされています。
自然栽培・有機栽培を中心とした環境保全型の農業を行う生産者さんが地域で連携し、定期的に技術交流や圃場視察、交流会を実施しています。
小池さんらの日々の活動が実り、菊池には全国と比較しても多くの環境保全型の農業をされる方がいらっしゃいます。
「菊池市でも徐々に自然栽培の田んぼが増えてきました。これもとても有難いことです。
自分だけでなく地域が一体になって環境に配慮した農業がもっと広がっていくといいですね。」
感謝の短冊
お米作りに対するこだわりとお客様へコメントをいただきました。
「大したこだわりではないですが、田んぼの水口に『感謝』の短冊を立てて、毎日の見回りで『ありがとう』と声を掛けています。そうすると、毎日見るもんですから水が綺麗になっている気がするし、稲も声掛けに応えて元気に育ってくれているように感じます。
自分がしていることは、草刈りを徹底しているくらいで、自然の流れからするとほんの小さなことです。稲がのびのび育つのをただ、見守っているような感覚です。」
「育ってくれたお米、流通・販売してくださる方々、そして食べていただいているお客様にただただ感謝です。
そんなお米を食べて少しでも幸せになっていただければと思って、日々お米作りをしています。」
自然と常に向き合うほど人の小ささを感じる、と話される小池さん。
あくまで謙虚なお人柄の小池さんは、取材を終えると収穫を待つお米のもとへと向かいました。
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